6/6(水)19:00 6/7(木)12:00
記念すべき黒澤明の監督処女作。山本嘉次郎監督に薫陶を受けた黒澤が、身につけた映画的知識の全てを披露すべく取り組んだ斬新なアクション映画として、高い評価が寄せられた。全部で7つある重要な格闘シーンは、それぞれが1本の映画のクライマックスとして成立可能なほどの迫力・完成度を見せ、分けてもコマ落としやモンタージュ技法を駆使した、三四郎と檜垣源之助との最後の一騎討ちシーンは公開から半世紀を経た今となっても古さを感じさせない。
時は明治15年。修道館の柔道家・矢野正五郎の人徳に深く打たれた姿三四郎は、門下生として修道館に入門。たちまち頭角を現すが血気にはやり、稽古止めの罰を受ける。やがて師の言葉の真意を理解した三四郎は、柔道家として技能、精神共に大きく成長してゆくのだが、修道館と対立する他流派の猛者たちはそんな三四郎に次々と戦いを挑んでくる。 ▲PEGE TOP
●監督
黒澤明 ●撮影
小原譲治 ●出演
志村喬 矢口陽子 清川荘司
●1944年 85分 (C) 1944 TOHO CO., LTD.
一番美しく
【上映日時】
6/4(月)15:30
『姿三四郎』に続く監督進出第2作。黒澤監督には珍しく、若い女性の集団劇を扱ったものとして独特の位置を占めている。監督自身にとっても「私の一番可愛い作品である」という。
物語は敗色濃い昭和19年、女子挺身隊として徴用を受け、軍需工場に働く少女たちの日々を描いたもの。女子挺身隊とは、戦時下に男子労働者が軍隊に召集されたため弱体化した国内産業を補うべく、14歳以上25歳未満の独身女性を勤労動員した制度のことs。 当時、映画用フィルムを軍需物資として統制する権限を持っていた軍は、戦意昂揚映画の製作を各映画会社に要請、黒澤も海軍からゼロ戦の活躍を描く空中アクション作品の企画を持ちかけられていた。しかし戦況悪化と共にそれは立ち消えとなり、代替作として作られることになったのがこの作品である。 ▲PEGE TOP
●監督
黒澤明 ●原作
富田常雄 ●出演
藤田進 大河内伝次郎 月形龍之介
轟夕起子
●1945 年 82分 (C) 1945 TOHO CO., LTD.
續姿三四郎
【上映日時】
6/10(日)15:30
監督デビュー作『姿三四郎』は、戦意昂揚作全盛の時代に発表された明るいアクション映画として、観客・批評家から熱狂的な支持を受けた。思わぬ大ヒットに続編の製作が急遽決定、敗戦直前の1945年5月の公開に至る。前作と同様、富田常雄の小説が原作とされているが、小説の一部のエピソードが使われただけで、大部分は黒澤監督の創作によるもの。柔術対柔道の抗争をエンターテインメント・アクションとして見せ切る一方、後の黒澤作品に通底するヒューマニズムの精神を色濃く押出し、早くもその個性を発揮しているところが注目される。
右京ヶ原の対決で三四郎に敗れ、病床に臥せていた檜垣源之助のもとに、弟の鉄心と源三郎が訪れる。兄の敵・姿三四郎を打倒するための上京だった。そんな彼らにかつての自分を見た源之助は、三四郎に自らの過去と弟たちの非礼を詫びる。しかし、2人からの果たし状を受け取った三四郎は、単身彼らの待つ雪の天狗峠に向かうのだった。 ▲PEGE TOP
●監督
黒澤明 ●撮影
伊藤武夫 ●出演
大河内伝次郎 榎本健一 藤田進
森雅之 志村喬
●1945年 58分 (C)
1945 TOHO CO.,LTD.
虎の尾を踏む男達
【上映日時】
6/5(火)15:30
黒澤監督にとって、唯一のミュージカル作品ともいうべき異色作。歌舞伎の「勧進帳」をもとに、大河内傳次郎を弁慶に、藤田進を富樫役に据え、しかも原作にはない強力を登場させて、当時人気絶頂だったエノケンこと榎本健一を起用するという贅沢さ。日本の古典芸能に興味をもっていた黒澤が、歌舞伎のパロディを試みた画期的な作品となった。 ▲PEGE TOP
●監督
黒澤明 ●脚本
久坂栄二郎
●撮影 中井朝一 ●出演
原節子 藤田進 大河内伝次郎
●1946年 110分 (C)1946
TOHO CO.,LTD.
わが青春に悔なし
【上映日時】
6/6(水)15:30
黒澤映画には珍しい、女性を主人公にした作品。1933年の京大事件と第2次大戦中に発覚したゾルゲ・スパイ事件、この現実に起こったふたつの事件に想を得て、帝国主義に勇敢に立ち向かうヒロイン(原節子)の生きざまを描く。
原節子が演じるのは京大事件で大学を追放された滝川教授をモデルにした、八木原教授の娘・幸枝。幸枝は戦争中に敵のスパイとして逮捕され、獄死するジャーナリスト・野毛(モデルはゾルゲ事件の尾崎秀実)と愛し合い結婚。彼の死後も信念をもって逞しく生き抜いていく。そのヒロイン像は「日本が新しく生まれ変わるためには、女性も自我を強くもたなければ」という黒澤監督の考えを反映したものだった。当時の若者たちの共感を得たこの生き方は、いま見てもまぶしい美しさを放っている。 ▲PEGE TOP
6/19(火)15:30
1947年に公開されたこの作品は、敗戦直後の風俗を背景に恋人たちのささやかな日常を描いて、爽やかな感動を呼び起こした。敗戦後の悲惨な世相の中で、日本人が本当に求めている映画とはどんなものかを真剣に考えていた黒澤監督は、アメリカのサイレント映画『素晴らしき哉人生』にヒントを得て、恋人たちを"激しい現実の中"に呵責なくさらし、その中から"萌え出してくるような夢"をつかまえる姿を描こうと考えた。
当時のお金でわずか35円を握りしめ、デートをする恋人たちのある日曜日。その1日を追うという物語の脚本化に協力したのは、黒澤監督の小学校時代からの親友で劇作家の植草圭之助。映画のクライマックスでは、主人公の昌子が観客のいない野外音楽堂でひとりタクトを振る雄造のために、映画館の観客に向かって「私たちに美しい夢が描けるように、拍手をお願いします」と呼びかける。この前代未聞のシーンには、黒澤監督の熱い想いが込められており、この作品がパリで公開された時には、映画館が熱狂的な拍手につつまれたという逸話も残っている。心暖まるこの作品で黒澤は、数々の監督賞を受賞した。 ▲PEGE TOP
6/22(金)15:30
戦時中、中国戦線の軍医として従軍していた青年医師は、当時「不治の病」と言われていた「梅毒」に誤って感染してしまう。復員後、婚約者の人生を考えた彼は、わざと冷たく接し自分を諦めるよう促し、誠実な医師として働きながら一人で病と戦おうとする。婚約者への仕打ちを責められ苦悩する彼は、やがて病気について打ち明けるのだが・・・。
黒澤明が初めて東宝以外で演出した作品。音楽は『ゴジラ』などの巨匠・伊福部昭が担当。製作当時は不治の病であった「梅毒」に感染しながらも、病魔と、そして己の人生と闘い、誠実に生きようとする主人公を、三船敏郎が好演している。 ▲PEGE TOP
6/5(火)19:00 6/6(水)12:00 6/14(木)15:30
芥川龍之介の小説を原作にヴェネチア映画祭でグランプリを受賞。 平安時代、都にほど近い山中で、貴族の女性と供回りの侍が山賊に襲われた。侍は殺され、女は犯された。やがて山賊は捕まり、事件は検非違使によって吟味される事になった。しかし、事件についての各人の証言はまったく食い違ったものだった。果たして事件の真相とは・・・。 ▲PEGE TOP
●監督
黒澤明 ●脚本
黒澤明 菊島隆三
●撮影 生方敏夫 ●出演
三船敏郎 山口淑子 志村喬
●1950年 104分 (C)1950 松竹株式会社
醜聞<スキャンダル>
【上映時間】
6/12(火)15:30
新進画家の青江一郎(三船敏郎)は、温泉で偶然知り合った美貌の声楽家とのスナップ写真をネタに、事実無根のスキャンダルを雑誌によってでっちあげられる。憤る青江に弁護を申し出てきたのは、世俗にまみれた悪徳弁護士であった・・・。
マスコミの愚劣なスキャンダル合戦を通し、誤った認識で言論の自由を語る社会そのものを徹底批判した黒澤明監督若き日の作品。現代にも通じる社会的テーマのなかで、世俗にまみれた弁護士の人間的再生を描く、ヒューマニズムの尊さを訴え続けた黒澤監督ならではの秀作。 ▲PEGE TOP
黒澤監督が自ら設立した黒澤プロで初めて製作した作品。現代社会にはびこる政治汚職に鋭く切り込み、同時にサスペンスに満ちた娯楽映画としても成立させた画期的な作品。
汚職事件の責任を被せられて死んだ父の復讐に燃えて、その息子・西幸一が公団総裁の秘書として政界に潜入する。彼の策略にはまり悪徳高官たちが一人また一人と仮面を剥されていくその痛快さ。しかし、より巨大な権力の前に、西の孤独な戦いが敗北する時がやって来る。 ▲PEGE TOP
『痛快娯楽時代劇の決定版』という呼び方が最も似合う、娯楽映画の技巧を追求した傑作時代劇。 やくざの2大勢力が縄張り争いに明け暮れ、すっかり荒れ果ててしまった小さな宿場町。そこに流れて来た桑畑三十郎と名乗る凄腕の浪人が、用心棒として雇われる振りをして両派を煙に巻き、同士打ちさせようとする。 ▲PEGE TOP
誘拐犯と捜査陣との息づまる対決を描いた、サスペンス映画の決定版。エド・マクベインの小説『87分署シリーズ』の一編『キングの身代金』を脚色。"誘拐事件"そのものの過程を追うにとどまらず、犯人が犯行に至るまでの動機をもくっきりと描き出した、重厚な人間ドラマが展開する。
全編に渡って圧倒的な緊張感が溢れており、中でも日本映画史上に残るほど有名な、身代金奪取の意外なトリック・シーンが圧巻だ。黒澤監督は疾走する特急こだま号を舞台にすると決めるや、こだま号の設計図を入手し、当時の国鉄を電話で質問攻めにして列車の構造を隅々まで分析してトリックを考案した。そして国鉄の全面協力のもと、実際にこだま号を走らせ8台のカメラを同時に回すという、他の日本映画では考えられないダイナミックな撮影を敢行した。あくまでもウソのない演出姿勢が、この作品を他の犯罪映画とは一線を画したリアルなものにしていることは言うまでもない。 ▲PEGE TOP
「どうしても作りたかった」と公言し、日本映画の演出としては10年振りとなった『影武者』でさえ、本作品のための試作目的を兼ね備えていたという黒澤明後年の代表作。
『乱』の原点はシェイクスピアの4大悲劇の一つとなる『リア王』である。黒澤が当初企画した戦国時代の武将の悲劇、"1本の矢は折れるが、3本束ねると折れぬ"という「三本の矢の教訓」で有名な毛利元就の3人の息子たち、あの優秀な息子たちのお陰で毛利はあれだけ繁栄したが、もし彼らが骨肉の争いをしたら、という発想が3人の娘を持ったブリテンの老王リアの悲劇に結びつき、黒澤映画芸術の集大成を築き上げた。
「私の中に残っているエネルギーをすべてこの作品に注ぎ込みたい。天の視点から人間のやっていることを俯瞰の目で見て描きたい」と黒澤が語ったように、作品から匂ってくる無常観、厭世観が観る者を圧倒する。『姿三四郎』でデビューを果たしてから40年以上にもわたって日本映画の地位向上に心血を注いできた黒澤だからこそ作りえた作品といえる。『乱』には26本の映画を生み出すことによって培ったきた黒澤の映画観・人生観・芸術観が、異様な緊張感を含有しつつ濃密に内包されている。 ▲PEGE TOP